2.再会









『ピュイ』
(一体何なのよ。でもこの方向って確か・・・。)
飛んでいくピュイを追いかけながら、この先がアストレイの格納庫だったことに気づく。
そんなことを考えているうちに、格納庫の入り口へとピュイが入っていった。


『ピュイ』
「え、う、うわっ!?」
「あら。」
それと同時にどこかで聞いたような少年の声とエリカ・シモンズの声が聞こえた。
どうやら少年の方は後ろからピュイに飛びかかれたようだ。
「す、すみませ・・・・・!?」
まずいと思って詫びながら格納庫へと飛び込む。


肩に止まったピュイを見る少年がゆっくりと振り向いた。
とたんにその瞳が驚きに見開かれる。
・・・?」
「キラァ!!」
涙で視界がにじむ。嬉しさでは走りよってキラに抱きついた。
「心配してたんだよ!・・・初めは行方不明って言われて、すごく不安で!
そしたら今度は地球連合の戦艦に助けられたって聞いて・・・・!」
涙がポロポロと零れる。言いたいことは山ほどあったはずなのにうまく話せない。
「・・・・ごめん。」
顔を上げるとキラは困ったように笑った。


「なんか痩せてない?それに顔色も良くないし。それにこの制服、どうして・・・。」
矢継ぎ早に質問を浴びせてしまう。久しぶりに会った従弟は顔つきが大人になったように見えた。
それにちょっと痩せたと言うよりはやつれている、と言った印象。
あと気になったのが、なぜキラが地球連合の制服を着ているのかということ。
とても嫌な予感がする。
。感動の再会のところ悪いのだけれど・・・・。」
声を掛けられた瞬間、はっと我に返る。
「すっ、すみませんっ!シモンズ主任!!」
あまりの嬉しさにここにエリカがいたことをすっかり忘れていた。恥ずかしさと申し訳なさで顔から火が出そうになる。


「いいのよ。でもこんな偶然ってあるものなのね。とキラ君が知り合いだなんて。」
エリカは少しも気にすることなく、くすくすと笑う。
「い、いえ。知り合いというかなんというか・・・、僕とは従姉弟同士なんです。」
なにもあせって言うことでもあるまいに、キラは妙に慌てて答える。
「あら、そうなの?」
それを聞いたエリカが今度はに視線を向ける。それを見てはこっくりと頷いた。


そのときだった。
「これが、中立国オーブという国の、本当の姿だ。」
三人に聞き覚えのある声が掛けられたのは。
声が聞こえた方向をみると、金髪でカーゴパンツ、赤いTシャツ姿の少女が立っていた。
「カガリ様!いつお戻りになられたのですか!?」
が振り返ったとたん、少女―――カガリが心底驚いた顔をした。
!?お前、何故こんなところにいるんだ!?」
「ヘリオポリスからオーブへと避難してきた後、シモンズ主任が助手にと雇ってくださったんです。」
カガリの眉が顰められる。
「なんだって!?しかし説明してくれるのはありがたいが、敬語はやめてくれないか?『様』付けもだ。
いくらなんでも幼い頃から知っているお前に他人行儀な態度を取られるのは嫌だから。」
「ですが・・・。」
いくら幼い頃から知っていると言っても、モルゲンレーテで働いている以上、前代表ウズミの娘であるカガリは目上の存在だ。
気安くタメ口などは吐けない。
戸惑いながら、カガリの頬をみると赤くなっていた。一体どうしたのだろう。
そんなことをが考えていると、彼女の沈黙を迷いと取ったのかカガリはムッとした顔をして言う。
「私がかまわないと言っているからいいんだ!・・・今度、『様』付けだったり敬語を使ったりしたら容赦なく無視するからな。」
拗ねるカガリとこの言葉にはプッと噴出す。本当に幼い頃から変わらない。
「わかったわ。カガリ。」
はぁ・・・とため息をこぼしながら、観念していつもどおりの口調に戻す。横でエリカがくすくすと笑っていた。
この調子ではカガリは本当に敬語を使ったり、『様』付けで呼べば無視することを実行するだろう。


「・・・・あのさ。今更聞くのもなんだけど、カガリとって友達だったの?」
それまでとカガリのやりとりを呆然として見ていたキラが少々の躊躇いのあと聞いてきた。
「・・・・父親同士が友人でな。結構小さな頃から会うたびに一緒に遊んでたんだ。」
カガリは「父親」と言った時に一瞬顔をしかめたような表情を浮かべたが、それ以外は躊躇することなくキラに答える。
「そう言えば、時々叔父さんが長い休暇を取ったときよくと出かけてたっけ。あれってオーブに行ってたのか。」
納得したようにうんうんと頷くキラ。
「ちょ、ちょっと待って!よくわからないんだけど二人とも知り合いだったりするわけ!?」
キラがカガリを呼び捨てにするなど、親しいそうな雰囲気で話すカガリとキラのやり取りを聞いて、
今度はが驚く番だった。


二人の話によると、二人はヘリオポリスにザフト軍が侵入したとき、一度会っているらしい。
そのときは直ぐ別れたものの、キラの乗っている戦艦が地球に降下したあと、砂漠で再会し今まで行動を共にしていたと言う。
「・・・・世間って狭いのねぇ・・・・・・・・。」
はその話を聞いてあまりにも運命とは解らないものだと感心してしまった。
今まで知らなかった自分の従弟と親友が偶然の出来事が重なって出会い、自分とのつながりができる。凄いことなのだと思う。


「これはM1アストレイ。モルゲンレーテ社製、オーブ軍の機体よ。」
大体話が一区切り着いたところで、エリカがキラに本題を切り出した。
しかしなぜ第三者であるキラがここに呼ばれているのだろう。
現時点ではアストレイはオーブの機密のはずである。キラがここにいる理由がわからない。
はそう思いながらも、口には出さなかった。それはおいおいエリカが説明してくれると思っていたからだ。


「オーブはこれをどうするつもりなんですか?」
中立国だったはずのオーブが秘密裏にモビルスーツを製造している。
その事実にキラは疑問を持ったようでエリカに尋ねた。
「どうって?」
エリカは首を傾げただけだったが、キラの問いに答えたのはカガリだった。
「これはオーブの護りだ。」
カガリのアストレイを見る目は鋭い。彼女が良く思っていないのはその目を見れば明らかだった。
「お前も知ってるだろ?オーブは他国を侵略しない、他国に侵略を許さない。他国の争いに介入しない。
・・・・・その意志を貫くための力さ。」
キラに眼差しを向けると、今度ははき捨てるように言った。
「オーブはそういう国だった。・・・・そういう国のはずだった!お父様が裏切るまではな!!」
はこの言葉に愕然とした。
カガリはウズミがヘリオポリスのガンダム製造を知っていたと思ったのかもしれない。


「カガリ、それは違うわ!!ウズミおじ様は・・・・ウズミ様は!」
「あら。まーだ、おっしゃってるんですか?そうではないと申し上げましたでしょう?」
は知らなかったとその後に続けようとしたが、その続きはエリカが引き継ぐように言った。
ウズミはヘリオポリスの地球連合軍のMS開発は知らなかったと。
そのエリカの言葉に、国の最高責任者が知らなかったで済むと思うのか、知らないことだったとしても『罪』は『罪』なのだと、
カガリはさらに激昂する。
は確かにカガリのいうことは正しいのだと思う。施政者であるのならば知らなかったでは済まされない。
だがウズミは明らかにヘリオポリスの一件では、止められなかったと苦悩したに違いないだろう。
その証拠に現在、ウズミは責任を取って弟であるホムラに代表を譲っている。
そのことについてエリカが説明しても、カガリはホムラに口を出している時点で以前と変わらないと取り合おうとしない。
あんなに仲の良かった親子。ヘリオポリスの一件は父親が大好きだった分、よけいにカガリは裏切られた気持ちが強く、
同時に大きなショックを受けたのだろう。


「あれほど可愛がっていたお嬢様がこれでは、確かにウズミさまも報われませんわね。
確かに、ほっぺの一つも叩かれますわ。」
頑ななカガリの態度にエリカがため息をついてそう言うのを聞いて、は、カガリの頬が赤くなっていたわけを悟った。
ふとキラを見ると、二人のやりとりをぽかんとして見ていた。
一技術者が、仮にもオーブの姫であるカガリに対し、気心を知れたように会話しているのだ。
混乱するなというほうが無理だろう。

「さ、こんなおバカさんはほおって置いて・・。来て。」
カガリとエリカの言い争い、といってもカガリが一方的にだったが、エリカの言葉で断ち切られた。
エリカはキラへと視線を向けるとそう言って先へと歩き出す。
キラはカガリを気にしながらも、近くにあったアストレイへと視線を向けながらエリカのあとへと着いていく。
その顔に大きな翳りが垣間見えたような気がして、はなにか心に不安な気配が渦巻くのを感じていた。





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ヒロインちゃん、やっとキラと再会です。