おかえり




プラント側からの停戦協定提示から数時間後、ディアッカはアークエンジェルの通路で
静かに窓から宇宙を見つめていた。

瞳に映る宇宙は戦いの閃光などはなく沢山のデブリが浮かぶのみだ。

ディアッカははあ、と安堵のため息をついた。今さら実感が湧く。戦いは終わったのだと。

この戦いでニコルを喪い、自分はアークエンジェルの捕虜となりそして――――

彼女に出会った。

目に大粒の涙をためてナイフを振りかざし、自分を見ながら泣き叫ぶナチュラルの少女の姿を見たとき悟った。
自分が戦った結果、見えないところでなにが起こっていたかを。

ニコルが死んだとき、ディアッカは悲しかった。年下とばかにして見下していたのに、
心の奥底では仲間と認めていたと思い知った。

そして目の前で恋人のために涙を流す少女はあのときの自分と同じで。

ナチュラルも同じなのだ。誰だって大切な人を喪ったら悲しいのだと知った。

ニコルを―――戦友だった彼を喪って自分やイザーク、アスランが悲しんだように。

それと同時にその少女――――ミリアリアの姿が心に深く刻まれた。

そしてオーブが地球軍と戦わなくてはならなくなったときも、彼女はオーブは私の国だからとできることがあるからと
自ら進んで戦いに参加した。

それもプラントを、自分の国を守りたいと思って戦っていた自分たちと同じ。

「・・・・ディアッカ。」

遠慮がちな声が聞こえて、ディアッカは思考を中断させて声が聞こえたほうを見るとそこにはミリアリアがいた。

「あれ、ミリアリア。」

ディアッカが笑って手を上げて「どうしたんだ?」と後を続けようとしたそのとき、勢いよくミリアリアが抱きついてきた。

「うわっ!」

無重力なのと抱きつかれた勢いとで宙を流れていく身体を、あわてて右手で手すりを掴み止め、
もう片方でミリアリアの身体をで支える。

ディアッカはほっと息をついた。この通路はまっすぐだ。掴むところがなければそのまま流されて
通りがかった誰かとぶつかるところだった。

ゆっくりと身体を離すとミリアリアの右手が伸びて、包帯が巻かれた額の傷口にそっとふれる。

「大丈夫・・・?」

ミリアリアが心配そうな顔をして尋ねてくる。ディアッカはぽんとミリアリアの頭の上に優しく手をおいて笑った。

「額だったから出血は多かったけど、傷自体はたいしたことねえよ。」

「そう・・・。」

だから安心しろというように微笑んでやると、ほっと息をつく。

少しの沈黙。

「・・・・おかえりなさい。」

傷に添えていた右手を離すと、泣き笑いのような表情を浮かべミリアリアはディアッカを見つめていった。

「ただいま。」

ミリアリアからの言葉が嬉しくてふわりと笑って言うと、彼女は今度はゆっくりとディアッカの服を掴んで胸に顔をうずめた。

どうしたのかと肩に触れて驚く。肩が震えている。泣いているのだとそのとき理解した。

「お、おい、どうしたんだよ!」

ディアッカは慌てふためいた。なにかしたのかと混乱する頭の中でぐるぐる考えているが、なんで泣かれるのかわからない。

「・・・・・・・・・った・・・・・。」

「へ?」

肩を震わせながら、ミリアリアがなにかを呟いた。

「あのプラントの・・・・見慣れないモビルスーツの攻撃を・・・・・バスターが受けて大破、したとき、ディ、ディアッカが
死んじゃうかと思った。トールみたいにディアッカも・・・・・私を・・・置いていっちゃうかと・・・思っ、た。」

泣いているミリアリアの言葉にディアッカは胸を突かれる。トールのことが彼女のトラウマになっていることは
ディアッカも気がついていた。

メンデルの戦いのときもそうだった。
メンデルから脱出したあと、ミリアリアは「心配したんだから・・・!」と瞳に悲しそうな光をたたえて言っていた。

あとからサイに聞いた話では、ミリアリアはメンデルの裏の港口に潜伏しているザフトの様子を見に行った
ディアッカとムウに必死で呼びかけていたらしい。

あの自分が投降した戦いでトールとキラが消息不明になったときも、必死で二人に呼びかけていたことも聞いた。

何度呼んでもなにも応答がない大切な人、友達、仲間。モニターに表示された『SIGNAL LOST』の文字。

そして今日。『SIGNAL LOST』の表示がなくとも、プロヴィデンスガンダムに手ひどく攻撃を受け
通信が不可能となったバスターガンダムにあのときのことを重ねてしまったのだろう。

「呼びかけてる、のに・・・・全然っ、応答が、なくて・・・・死んじゃった、かと、思ったん、だからぁ・・・!!」

そう言うとミリアリアは涙をぽろぽろとこぼしてしゃくりあげる。こまったように微笑むと、
ディアッカはミリアリアを優しく抱きしめる。

「不安にさせてごめん。心配させて・・・本当にごめん。」

悲しませてしまったことを誤りながら、ディアッカはミリアリアが泣き止むまで背中を優しく叩いてやった。





あとがき

ううう、やっとアップです(汗)。

なんかやたらしり切れトンボだし甘さがあるような・・・・。

本当に最近スランプ気味です。

内容については決まっているんですが、

あまりにも表現するのがむずかしいので・・・・。

他のサイトの管理人様の苦労をひしひしと痛感(涙)。



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